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開発者コラム

最終回 ニューリンとLaplacianのこれから【担当:緒乃ワサビ】

公開日:2017/05/26


ありがとうございます、ありがとうございます!

お陰様で今日も生きています、緒乃ワサビです。

本日、2017年5月26日、とうとう発売となりました、
『ニュートンと林檎の樹』

略してニューリン!

本当にね、作ってる時は

あ、終わらねぇわ、これ。

一ヶ月延期とかそういうレベルの話じゃねぇわ。

終わらねぇわ。

完成しねぇわ、この作品。

と、死んだ魚の様な目をしてひたすらに
空っぽのテキストファイルを眺めていた日々もありましたが、

今となってはなんか、全てあっという間だったような気がします。

全15回に渡った開発者コラムも、本日で最終回です。

こちらも同じく、あっという間だったような気がします。

まさか同じコラムのコーナーに

シェ〇ムーの話OP歌唱アーティストさんの裏話
更には出演演者さんの収録台本が共存するなど、

誰が予想出来たでしょうか。

このコラムに記事提供してくれたMAMIさんと春乃いろはさん、
本当に有り難うございました。

さて。

Laplacianは、大体10ヶ月位の期間をかけて、
1本のフルプライス作品を作ります。

つまり今日という日は、
Laplacianに、大体10ヶ月位のスパンで訪れる節目の日なので、
このコラム最終回の場を借りて、

ニューリンについて、

そして、Laplacianのこれからについて、

書きながら考えてみたいと思います。

・ニューリンについて

僕がまだ字も読めない頃、
生まれて初めて買い与えられた本は

「月と林檎の話」

という本でした。

父親が僕に対して、何やら熱心に万有引力の法則の説明をしていた記憶が
朧気にあるのですが、

「なんだかよくわからんな」

と子供心に思った気がします。

その英才教育(?)が功を奏したのかどうかは知りませんが、
中学生になった僕は、唐突にアインシュタインにのめり込みました。

アインシュタインの生き方、考え方、残した功績、
全てに夢中になり、興奮して、嫉妬しました。

その時僕は「運動不足解消部」という部員一人の自主団体を作って
放課後に校庭を走っていたのですが、

どうにも運動部の方々が

なんでアイツ一人で走ってんの? キモくね?

的な感じで我が運動不足解消部を快く思っていない事が
人づてに伝わって来たので、

自主的に結成した運動不足解消部は
儚くも自主的に解散することになりました。

だから僕は今でも運動部の方々が嫌いです。

嫌いというか、苦手です。

苦手というか、怖いです。

さておいて、

自主的に走ることすら禁じられて

くすぶっていた青いエネルギーが、
アインシュタイン博士の顔面めがけて
いっきに吹き出しました。

放課後にマクドナルドに入り、
ひたすらに月刊ニュートンとブルーバックスを読んで、
ノートにまとめる、

位しかやることがなくなってしましました。

ちなみにこの時、僕がマクドナルドで一番気に入っていたメニューは

無料の水に、無料のスティックシュガー5本と、
コーヒーフレッシュ2つを入れた飲み物です。

ミルクティーと同じ味がして且つ、無料なのでとても重宝していました。

この完璧に近い飲料が無料です。

スマイル頼んでる場合じゃねぇ。

この飲料を飲みながら、そして、
世の中の運動部を恨みながら、耽っていた妄想の世界。

光の速度に近い速度で移動できるとしたら?
その時、見える景色はどうなる?

過去に行って自分の親を殺してしまったら、その瞬間に自分は消えるか?

光の速度の99.9%の速度で移動している飛行機の中で時速900kmの弾丸を放ったら、弾丸は光の速度を超える?

などなどの、思考実験という逃避の場が、

多感な時期の自分を随分救ってくれたように思います。

三つ子の魂百までとはよく言ったもので、
僕はそのまま理工学部の物理学科に進みました。

そして唐突に、物理をやらなくなり、
メイド喫茶に週6で通い始めました。

まさかの大学デビュー。

その後なんだかんだで、それなりに物理を勉強しながら、

適当にメイドさんにセクハラしたりしつつ、
適度に単位を落とす、という
クソみたいな大学生活の途中で

Laplacianの母体となる会社を作った訳なのです。

というわけで、今思い返すと、

この『ニュートンと林檎の樹』という企画には、
自分が好きなものが全て詰め込まれているように思います。

だがしかし、この思い入れが仇となった。

仇となって、最後は救いとなった訳なのですが。

というのも、キミユメを終えてニューリンの開発が始まった時

「とりあえず、1本は書き切ったった、ヨシ!オシ!」

「でもあんま売れなかったから次はもっと頑張る! オシ!」

と、随分肩に力が入っていた気がします。

いや、結局ニューリンの、
最後の一文字を書ききるその瞬間まで肩に力は入りっぱなしでした。

脱稿した日は、その日までの3ヶ月間泊まり込んで
毎日シナリオ制作に追われていたその開発室で、

自分が書くべきテキストがない、

という晴天の霹靂のような事態をスグには飲み込めず、

上がったばかりのシナリオを血眼で組み込んでくれている
スクリプターさん達の後ろをウロウロしてました。

「みんな、忙しそうだなぁ……そりゃそうだよな……」

「こんな時期にまっさらなシナリオ上がって来たンだもんなぁ、
忙しいよなぁ」

などと考えながら、手を後ろに組んで事務所をウロウロしてました。

そしたら上都くんに「暇なら手伝え」と指示を受けて、
僕も色々と演出を付けさせてもらえる事になりました。

ウロウロしてる僕が、よっぽど邪魔だったんでしょうね、きっと。

シナリオ、という切り口で振り返ると、

キミユメはまさに、ノリと勢いだけで押し切ったように思います。

「シナリオの書き方とか知らんけど、多分こんな感じじゃろ!」

「これはこれで、多分面白いじゃろ!」

と、ほとんど筆を(実際はキーボードですが)止める事なく、
結末まで辿り着かせました。

まぁ、今振り返ると色々と足りていない所も見えてくるのですが、
僕は結構キミユメは気に入っています。

赤字だったけど。

そして、ほんの少しのインターバルを挟んで、
ニューリンの開発が始まりました。

再びテキストエディタを立ち上げて書き始めようとしたその矢先。

驚きました。

何も書けないのです。

もう少し正確に言うと、

軽いノリのシーンを書こうとして何行か書いても、

すぐに雰囲気が堅くなってしまうのです。

そしてそれを読み返して思う訳です。

「これは、キミユメを面白いと言ってくれた人達が
求めているものと、かなりズレてるんじゃないか……?」

「誰も自分に、こんな真面目な展開の話は求めてないんじゃないか……?」

などと余計なことを考えて、

そして振り出しに戻るのです。
今思えばアホな話です。

前作がそんなに売れてないんだから、
求められるもクソもねぇ。


それが正しい答えでしょう。

しかしこの時には、妙に前作のことに囚われていて、
キミユメをどんな心持ちで書いて、どうやってテンションを維持したのか、
サッパリ思い出せずに焦りました。

うーん、これは参った。

参ったから……先にムービーでも作るか。

そして、ティザームービーが生まれました。

自分が勢いで作るなら、多分こんな感じになるだろ、

と、大体のあたりを付けて。

キミユメを通して学んだのは、

力加減を調整すると、結果誰にも響かないシロモノになる、

ということだったので、ニューリンという作品が持つ、

コミカルで狂気染みた要素は全てティザーに振り切って出して、

シリアスでミステリアスな要素は、全てOPに集約しようと。

まずは、その振れ幅でみんなを驚かせて、楽しんで貰おうと。

それに、ティザーのノリが嫌いな人はもうこの作品買ってくれなくてもいいや。

確かそんなことを考えていた気がします。

前作赤字だったクセに妙に強気です。

経営者失格です。

まぁいいか。

そして、ティザームービーに引き続き、

勢いだけで書けなくなってしまったシナリオ制作の
本質的問題は何一つ解決しないままに、

あの素晴らしいOPムービーが完成しました。

楽曲、唄声、動画の演出、全てに満足できる、
とても良いムービーになったと思っています。

毎日ムービーを何度も再生しながら、
依然として冒頭のシーンを書き続けます。

そして、心の中にはっきりとした自問が浮かび上がって来ました。

これは、本当に、ノリと勢いで書いていい企画なのだろうか、と。

もしかするとニューリンは、ノリと勢いで軽快に、ではなく、

真正面から硬派に書かなくてはいけないのかもしれない。

でも、ニューリンのWebサイトとティザームービーは、随分ノリノリです。

そもそも略称がニューリンです。

このままだとサイトから受ける印象と、
本編の内容が確実に乖離します。

その時には既に、サイトにも結構な人が来てくれていたし、
予約も開始している。

そこまで派手に、物語の方向を転換しきっていいものか……。

悩んでいる間に、月日は経っていきます。


題材はタイムトラベル。

先人達の手垢まみれのテーマです。

真正面から取り組むなら、どう自分の色を出すのか。

そもそも出せる様な色が、今の自分にあるのか。

耳障りのいい安牌の”コミカル”というコンセプトに依然、後ろ髪を引かれながらも、

頭では完全に、硬派なタイムトラベルのあらすじを組み立てていました。

「絶対に、自分にしか書けないタイムトラベルの物語がある!」と、
あの妙な飲み物を飲みながら、沸々と妄想に耽っていた、
若かりし童貞少年が声高に叫ぶ訳です。

そしていよいよメンバー達に、

これはマジでシナリオが上がらない、
今の緒乃には、シナリオを上げる気が、そもそもない、

絶対に間に合わない、ヤバい、と、

暗い雰囲気が開発室に漂い始め、

どちらかに決めざるを得ない状況になりました。

その時ふと冷静に考えると、

下手したら、今作はLaplacianの最後の作品になってもおかしくない
状況だったんですね、これが。

それ位スレスレの所に来ていた、知らない間に。

このメンバーで、この事務所で、同じようにゲームを作れるのは、
コレが最後かもしれない。

そう思った時に、これはもう、好きなもの書いた方がいいわ、と。

やっとのことで答えが出ました。

さようなら、見切り発車のコンセプト。

そして本作の主軸は完全に、

ストレートなタイムトラベルアドベンチャーに振り切ったところ立てました。

やっぱりどう考えても、その方が面白かった。

上がっていく途中稿をみれば、それは明らかでした。

Laplacianでは、僕のシナリオが褒められることは滅多にありません。

僕が調子に乗るからなのか、それとも本当に面白くないのか、怖くて聞けませんが。

だけど今作においては、
内勤してくれたメンバーがみんな、面白いと言ってくれました。

僕も、ニューリンは面白い物語になったと思っています。

皆さんにとって面白くなかったら、これはまぁ誠心誠意謝るしか出来ませんが。

すくなくとも僕たちは、「コレは面白いものができたぞ」と、

自信を持って市場に出せる作品になったと思っています。

最終的に、今回はキミユメと全く違う脳の使い方で書いた気がします。

これがまぁ、キミユメを書くよりも遥かにしんどい作業だった訳なんですが、

その代わりノリと勢いではなく、

「企み」を積み重ねながら物語を作ったので、

再現性がある気がします。

つまりは、もう今作の最初のように、

「どう書いたらいいのか分からん、思い出せん」

という風にはならないだろう、というアタリをつけられたというか。

自分の得意な分野と書き方も少し見えて来て、
物書きとしても、何かを掴めた様な手応えがありました。

僕にとっての、個人的なニューリンの総括はそんなところでしょうか。

いよいよ、皆さんのお手元に、ニューリンが届きます。

10ヶ月の制作を終えたLaplacianは、
ただただ、自分達の手元を離れた作品が
皆さんをしっかりと楽しませることを祈るのみ……。


・Laplacianのこれからの話

お陰様で(本当に本当に、お陰様で

Laplacianは何とか、次の作品を作らせてもらえそうな気がします。

儲かって儲かって笑いが止まらんぜヒャッッハーー!!!

とはいきませんが。

少なくとも僕たちが思っていたよりも、
ニューリンは沢山出荷されていきました。

発売日を待たず手元になくなってしまったので増産をかけて、
この増産分もなくなってしまったら、通常版を製造する予定です。

でも、きっと少し一息ついて、
またすぐに次の企画に取りかからないといけない状況な気はします。

Laplacianの作品は、今の体勢で作る限り、しばらくは
サイエンス・フィクションのジャンルになるんじゃないかと、
僕は勝手に思っています。

少しだけ未来の、創造の範囲内だけど、実現できてない科学技術。

今度はそんな世界観の話にしたいと思っています。

完成するのは、いつになることでしょうか。

次は延期したくないですしね。

というか、次はさすがに延期をネタにできるビジョンが湧かない

そもそも今作でネタにしてよかったかも分からないのに。

でもまぁ、大体10ヶ月〜1年の間になることでしょう。

その時期にまた、Web芸人のようなプロモーションで、

皆さんに「相変わらずだ」と言ってもらえたら、ステキだね。

6月の末頃には、ニューリンの大ネタバレ解説配信をやりたいと思っています。

またそちらで、お会いしましょう。

皆さんの乳輪が、いつまでも薄桃色でありますように!


緒乃ワサビ

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